☆わたしたちのたび ライナーノーツ☆

■くにい

【全体について】

ドラクエを歌っちゃおうという「ドラクエフェア」(勝手に命名)をやろうと思ったのは
もう5年くらい前だったでしょうか。
まさかこんなにたくさんの方の協力を得て、25周年というこの年に
こんなに素敵に作品としてまとめることができるなんて思ってもみませんでした。
企画内容についてはF原さんとなんかいもなんかいもなんかいもやり取りして、
いろんなことを組み立てていきました。
企画も、演奏も、(追い込みも!)自分ひとりではとてもできませんでした。
皆さんの協力を本当にありがたく思っています。

今回はミネアとマーニャをイメージして、酒場で歌う二人からスタートです。
歌のあと、ホールの陰で占うミネアのカードが示したものは・・・。
そして夜があけて・・・というイメージ(脳内妄想ストーリー)。

今日は昨日の明日。未来は明日の今日。
思い出をさかのぼり、戻る場所は今なのかもしれません。

【さかばにて】
酒場の喧騒から始まり、カスタネットでこちらに目線を向けてからの曲スタート。
ミネアとマーニャの戦闘曲、ジプシーダンスを歌ってみたものです。
踊り子マーニャがメインで、ミネアはコーラスのイメージ。
歌のフレーズは新しくあわせているので、皆知ってるあのフレーズを口ずさめば自然とハモれるという趣向。
カヲルさんの美しくどこか艶っぽい歌詞に遊女さんの歌声がばっちりあっています。
折倉さんのギターもちょーぜつにかっこいいですね。
私はつい、聞きながらエアギターで「べい~ん・・・きゅっ!」とかやってます。

【きおく】
あなたは酒場の隅で占うミネアのところへ。
ミネアのカードが示したものはミネアとマーニャの記憶のようでいて、あなた(プレイヤー)の旅の記憶かもしれません。
(ちなみにここで録音に使ったカードは「ととかるた」というお魚カルタで、
金沢で買ったものです。ミネアin金沢とか思うと、ちょっとおもしろかったです…)

【ふなで】
ここからは記憶をたどります。
4の海の曲はオーボエの単旋律からスタート。
ちょっと訳あり風のせつない前半から、いろいろあって、大海原へきちんと目を向けて前に進む後半へ(というつもり)。
オーボエのほかにも、フルート、クラリネットの生演奏を入れてもらいました。生の音の豊かな響きにびっくりした1曲。

【ほこら】
それっぽいノリでてきとうな言葉で歌っています。
そもそも、ドラクエを歌おうと考えた最初の作品はこの曲でした。
小さい頃に楽譜付のカセットテープを買ってほこらのピアノを弾いてたんです。
そういえば手が覚えてるなあと思って、この音域なら何とか歌えないかしら?って。
最初に歌ったものはプレイヤーズ王国(当時)で公開していました。現在はニコニコ動画にあげています
今回はグレードアップ!豪華なほこらになりました。
言葉はなんとなく、1人でほこらを長年守ってるおじいちゃんの気持ち+なんだか聖なる感じが入ってるつもり。

【おおぞらをとぶ】
ラーミアです!ラーミア~!
わたしたちは わたしたちは たまごを たまごを!!
ラーミアに乗って世界をめぐれるようになったときの爽快感とか開放感とか。いいですねえ。
間のところは卵の中にいたときのラーミアの記憶のつもりでちょっとアレンジ。
最初にプレイヤーズ王国に上げたほこらをきいて、F原さんがラーミアを手伝ってくれました。
そのころからずーっと「ドラクエフェアをやりたい」といっていましたが、こんなに年月を隔てて実現できてうれしいです。
「おおぞらをとぶ」はF原さんとご一緒した最初の曲であり、ドラクエフェアのきっかけということで、
実はこの曲だけ当時の音源を収録しています(ニコニコ動画にもあがっています)。

【なかま】
高い音がなかなかうまく出なくて、鶴みたいになっちゃうなあと思いながらがんばりました。
♪らららららーん、ららららー、クェー!
・・・サマルトリアの王子の「さがしましたよ」に、えええ~もう~!ってなったり、
「くーん、くーん」ってついてくる犬の切ない思い出に浸ったりしつつ。

【ふっかつのじゅもん】
なつかしの「あの」感じを出すべく、ファミコンを出してきて効果音を録音。
ただ、残念ながら私の大切なファミコンは妹によって捨てられてしまったため、新しく買っておいたニューファミコンでした。
あーそれやったやった、なるよねー!とか、わあなつかしい~!って思ってもらったらうれしいです。
注)心臓に悪い例の音は入っていません。

【しゅっぱつ】
夜が明けて。ミネアとマーニャは旅立ちます。
そしてきっと、わたしたちも。

【わたしたちのたび】
ちょっとした仕掛け入り。後半は一緒に歌ってもらえるといいな。
メロディを考えるのがとてもとてもとても遅くなって、関係者一同に迷惑をかけまくった1曲ですが、
すごくよくできたと思います!!
やまみのりさんの素敵ピアノで歌ってみて、あわせてみて改めて感動しました。
聞いてくださった方とこの感動を分かち合えたらうれしいです。
直接の知り合いではなくても、私たちはこんな経験と想いを共有できる同じ時代に生き、
そしてこれからも同じ時をすごしながら、悩んだり苦しんだり笑ったりしながら時代をつくっていくのでしょう。

これからもつづく「わたしたち」のたび。たくさんの仲間とともに。

■F原

【全体について】

初めてドラゴンクエストを体験した中1の夏、
それ以来ほぼ全ての余暇時間をドラクエに関係する何かに費やしていた少年時代。
間違いなくドラクエは私の青春でした。
25年後、自分の子供とドラクエの世界観を共有できるようになるなんて、当時は考えもしませんでした。

今回、某音楽SNSで知り合ったくにいさんに声をかけていただいて全面的に関わりましたが、
正味4ヶ月程で新たに5曲もアレンジとミックスをやるというのはかつてない経験でした。
しかも、これまたかつてご一緒したことのないような豪華スタッフに恵まれ、圧倒され刺激を受けながらの制作。
土壇場の追い込みも効いて、確かな手ごたえの作品に仕上がったと思います。
同じドラクエフリークの皆様が懐かしい思い出に浸っていただければと思います。


【さかばにて】
この曲はくにいさんからの要望で最初からやることが確定していまして、
早い段階でバックトラックは形になっていました。

しかしボーカルは原曲にないフレーズということでくにいさんにだいぶ悩んで考えていただきまして、
オリジナリティのあるアレンジはすべてくにいさんによるものですね、
私は基本的に原曲をそのまま別の楽器に置き換えるぐらいしかやってない気がします。

オケの音色について、前提として「酒場で演奏できそうな楽器に限る」ということで、
大編成のオーケストラではなく、ウッドベースと掻き鳴らすフラメンコ調ギター、
カスタネット、タンバリン、アコーディオンといった構成にしました。
テンプレのつもりのしょぼい音源の打ち込みオケができた段階で他の曲の作業を優先していたので、
その状態がしばらく続いていました。

CD制作も終盤になってきた頃にやっとこさ遊女さんとくにいさんのボーカル、
そして折倉さんの生ギターがもの凄いインパクトで入ってきたので、これはオケも手を抜けないなと。
打ち込みが生音の迫力に勝ることは絶対ありませんが、ちょっとは真っ当な音になったでしょうか。
若干生音のメリハリを抑える方向の調整もしましたが、
全体として同じ空間で演奏してる一体感が出ていると感じてもらえれば幸いです。

何はともあれ、こんな凄い歌い手やギタリストのテイクを扱ったのは初めてで、とても恵まれた体験でした。

【ふなで】
マーニャとミネアが案内役、ということで2曲目は4章のエンディングイベントが印象的な海の曲です。

この曲はオーケストラ版(もしくはプレステ以降)アレンジがファミコン版に比べて随分追加要素が多く、
ファミコン版しか知らない人が聴いて「そもそも思い出せない」のではイマイチなので、
出だしはファミコン版をベースにして、4章のラストの船出の音から始めています。
前半はくにいさんの多重コーラスと打ち込みハープで、途中からオーケストラ版の間奏を取り入れ、
コーラスをバックに複数の木管楽器が代わる代わる登場、
後半ループではハープの代わりにクラリネットを入れてコーラスも豪華になっています。
オーケストラの高音ストリングスの役割をくにいさんの多重コーラスが担うような構成です。

最初の船出のフレーズは当初は歌ってもらうつもりだったのですが、
音域的に難しいことから打ち込みオーボエにしてみたのですが、
くにいさんから「オーボエなら知り合いに出来る人がいる」との申し出が!

さらに、間奏のフレーズまで演奏していただき、さらにフルートもできるのでフルートも生で!
さらにマスタリング担当の相川さんが実はクラリネット奏者だったのでクラリネットも生で!
…というわけで、まさに「あれよあれよという間に」木管楽器パートがほとんど生に置き換わってしまいました!
まさか後半のアルペジオまで生で演奏してもらえるとは思いませんでした!感服です。
結局打ち込みのまま残ったのは前半のハープと、低音ストリングス、
それに後半でクラリネットのアルペジオとハモるフルートぐらいです。

この2曲で、くにいさんの人脈の恩恵を最大限受けているなと実感しました。

【ほこら】

もう何年か前、くにいさんがこの曲をアカペラで歌った作品を某音楽SNSで見つけたのがくにいさんとの出会いでした。
その後「おおぞらをとぶ」のアレンジでご一緒しましたが、いつかドラクエフェア―をやるときには
この曲は是非ロングバージョンでアレンジしたい!というのが当時からの夢でしたが今回かないました。

尺を長くするネタはオーケストラバージョンから持ってきたりもしていますが、
いちばんインパクトがあるのはくにいさんオリジナルの造語歌詞でしょうねえ。
最初聴いたときから「むっちゃハマってる!」と思いましたもの。
1パートあたり2~3トラック使ってるので編集がかなり大変でしたが、労力をかけただけのことはありました。

そしてその造語がラスト1コーラスでぶわっと盛り上がる感じに一役買っていると思います。
拙いながらマンドリンのトレモロ多重録音も加えて少しでも豪華にしてみました。
単トラックで聴くと本当に拙いんですが、多重でエフェクトを駆使するとあら不思議、まともに聴けるように!(笑)

さすがにずっと声が登場しづっぱりだとくどいかもしれないので間奏でインスト部分も加えてみました。
ストリングスが主役になる部分はそれっぽい音色を探すのに苦労し、
打ち込みももうちょっと凝る余地はあるんですが、作業時間との兼ね合いで今回はここまでです。

あと、曲のアウトロ部分で凄く高い音が聞こえてて、ストリングスっぽくも聞こえるんですが
実はくにいさんのコーラスなんです、こんな高い音まで出せて凄いですよねえ。

【おおぞらをとぶ】
くにいさんとのコラボの始まりで、このアルバムの中で最も早く完成していた曲でもあります。
本当のことを言えば、当時のMIX/編集スキルで仕上げたもので今聴くと手直ししたくもあるのですが、
記念的な意味合いも込めて(時間的な都合もあったけどw)当時のままの音源で収録しています。

と言いつつこの曲を作っていたときがいちばん時間をかけていたのも確かで、
ギターのハーモニクス奏法を一音ずつ録音してトラックに並べたりと(アルペジオは生演奏にあらず)
凝ったことをしています。
間奏みたいなところのギターはちゃんと弾いてます。
ボーカルのフレーズでも原曲からちょっと変化してる部分はすべてくにいさんのアイデアです。
当時からくにいさんのオリジナリティ溢れるセンスには感心させられたものです。

こんだけ凝っても作品は2分弱ですので、次に焼き直しの機会があれば、
是非ともロングバージョンに挑戦したいものです。

【なかま】
ほとんどの曲が短調である中、唯一の歌モノ長調ということ、また私が特に好きな曲でもあるので
元気をもらいながら意気揚々と制作しました。
前半はボーカルパートが少なくてやや寂しくも感じるのですが、
後半になるにつれて仲間が増えて行く感じにしてみました。

そもそも元がゲーム音楽ということで歌唱に適したフレーズでは決してないのですが
この曲は特に難しかったようで、くにいさんには随分と苦労させてしまったようです。
でも頑張ってもらった甲斐あっていいモノができたと思います。

アルバム前半の曲が凄く生音いっぱいだったのに比して、この曲は打ち込みオンリーの伴奏に
なってしまいましたが、そこは次の曲につなげるためのワンクッションということで…
最初は前半の伴奏パートはストリングス系の音色を使っていたのですが、
「ふなで」の木管楽器に触発されて、打ち込みでも木管の音色を使ってやろうと思いました。
前半は木管で素朴に、後半でストリングスが入って広がりが出る、という狙いです。

【ふっかつのじゅもん】
この曲だけは歌モノの原曲があったのですが、逆にインストにしてしまいました。
実際は歌入れする時間があったかどうか怪しいんですが、リスナーの皆さんの記憶を
ダイレクトに呼び起こすという意味でも、後半では完全にファミコンの音にしようということは決まっていました。

じゃあ前半はどんなアレンジにするかなんですが、PC-9801時代のFM音源っぽさを狙ってみましたが、
あの時代っぽさが感じられるでしょうか?
個人的にはシンセドラムがそれっぽくなってお気に入りです。

そして中盤、突如音がバグって…のアイデアはくにいさんのたっての希望で(笑)
くにいさん自らの実演による音ネタをいろいろ用意してくださったので、
それに砂嵐ノイズを加えてそれっぽい「あるあるー」な雰囲気を演出しました(笑)
ゲーム機の電源切ったら砂嵐なんて今のTVじゃないですよね?
まあ、「それはありえんだろ」な演出もありますが、もしあったら焦るよねーってことで。

かなり遊んでしまった作品ですがこのトラックがアルバム中いちばん長いってどういうこと(笑)